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2020-08-13 10:00:00

伝説・蛇のむこ入り でんせつ・へびのむこいり

ある夕暮れ、藤吾という炭焼きの家に、美しい娘がたずねて来て、「私は阿古屋と申すものです。初夢にあなたのお嫁になる夢をみました」というのです。それを聞いた藤吾は、びっくりしましたが、京からはるばるたずねて来たという娘の願いを聞いて、お嫁に迎えたのでした。それから十年経ったある日、今は千貫長者と呼ばれるようになった藤吾夫婦は、千代姫という一人娘をつれて歩いておりました。すると大きた蛇か、がまを一呑みにしようとしています。可哀そうに思った藤吾夫婦は、がまを助けてやったのです。それからしばらくすぎた八月十五日、藤吾は近所の人達を呼んで、名月の宴をひらきました。宴もたかばの頃、どこからともなく、美しい笛の音が流れて来たのです。さっそくその吹き手を招いて、もう一曲望むと若者の吹く調べは、月明りの野辺にさえて、聴き入る人々の心にしみいるようでした。その日から千代姫は、その若者が忘れられず、ついにむこに向え、いつしか千代姫は、身重となりました。しかしどうしたことか、いつまでたっても赤ちやんが生れず、千代姫は苦しむばかりです。やつれはてた姫を見て、親達はただ心配するばかりでした。それから一ヶ月ほど過ぎた頃、一人の年老いた行者かたずねて来て、「むこどの、あの木のてっぺんに登って、鷲の卵をとって来て下さらんか、それを姫にのませるのじゃ」むこどのが木に登って、巣の中から卵をとろうとした時、親鷲かさっと飛んで来て、むこどのをひつつかんで、空高く飛び去って行ったのです。その有様をみて、行者は、「わたしはその昔、助けられたががまでございます。あの時の蛇か、むこどのに化けて、姫を苦しめたのです。」とはじめてそのわけを話しました。こういうと行者は力つきたのか、二度と頭をあげませんでした。ふとそばをみると、空からつき落されたむこどのは、大きな蛇になって息絶えています。あまりの篤きに、千代姫は急に苦しみ出しましたが、生まれたのは十二匹の蛇の子だったのです。藤吾天婦の驚きようはありません。しかも千代姫は、もうこの世にいないのです。それから藤吾夫婦は、大蛇と蛇の子を焼いてへび塚をつくり、行者のがまは石神として祀り、自分達は、神社やお寺をまわる、巡礼の旅に出たと言うことです。こういうがまの伝説をもつ石神は、鶴岡へ行く道のかたわらに今でも祀られております。