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2020-08-13 10:22:00

吹浦の鬼 ふくらのおに

飽海郡遊佐町吹浦

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今から二三〇年以上前の天明五年、橘南渓という医者がこのあたり(吹浦・旧道)を通りかかりました。はじめての通のうえ、海にそって細い道が続くので心細くなり、人に道のりをたずねました。すると、その人はびっくりして「お前さん、この道を小砂川さ行くなんてとんでもない。この先には鬼がいての、通る人は皆喰われてしまうだ。小砂川さ行くのはやめたがエー」といいます。日本のあちこちを歩いている南渓は、こんな話にはなれているので、そのままどんどん先に進み、夕方近く一軒の農家の前を通りかかりました。見ると五、六人の百姓がぶるぶるふるえながら「昨日は太郎が喰われたのに、つづいて今朝は隣村の次郎が喰われた」と話しておりますと、そこへ、息もたえだえの旅の男が村人にはこばれてきました。きいて見ると、昨夜一人で歩いていると、目の前に急に二つの光が浮びあがり、あっという間に組みふせられたという事です。「夢中で手にした石で鬼のアゴをたたき割り、逃げてきました。というなり、息が絶えてしまいました。これを聞いては南渓もすっかりこわくなり、その夜は農家に泊めてもらい、次の朝、馬をかりて大きな棒をもち山道をこえました。途中までくると、きのう話にきいた通り、するどい牙のついたアゴが落ちております。よく見るとそれは狼のアゴだったのです。このお話は、東遊記という橘南渓の書いた本に「吹浦の鬼」という題で書かれています。