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2020-08-23 10:42:00

鬼女伝説 きじょでんせつ

二本松市安達ケ原

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昔、京都のある公卿屋敷に、岩手という名の乳母が姫の養育にあたっていました。ところが突然この姫が、口がきけなくなってしまったのです。医者を招いて色々と手をつくしましたが、なかなか声が出ません。易者に占ってもらいますと「妊婦の生肝が効く」と告げました。岩手は姫様大事と都をはなれ、遠くみちのくの安達ヶ原に住み、旅人の来るのを待ち受けました。何年かが過ぎ、木枯しの吹く秋の夕暮れ、若い夫婦が一夜の宿をもとめてたちよりました。岩手はこれは幸いとばかり、二人を愛想よく、もてなしました。その夜、身篭っていた恋衣(こいぎぬ)が旅の疲れから、急に産気づき、夫の伊駒之助は、薬を求めに、人里へ走りました。時こそきたれりと老いた岩手は恋衣のお腹を裂いて生肝を取り出したのです。苦しい息の下から恋衣は、「私達は小さい時、京都で別れた母を探し歩いているのです」と一言い残して息絶えました。

岩手は、京に残してきた娘のことを思い浮べながら、恋衣の持物を調べると、自分が昔、いとしい娘に与えた守袋が出てきたのです。あまりの事に岩手は驚き、気が狂い、鬼になってしまいました。それ以来、立寄る旅人を次々と殺し、生血を吸い、肉まで食べるようになりました。

数年後、紀州熊野の僧、東光坊阿闍梨祐慶がこの原でゆきくれ、宿を乞いました。老婆は親しくもてなし、「決して隣の寝所は見て下さるな」といって薪をとりに出て行きました。祐慶は怪しんで、そっとのぞいて見て、びっくりしました。人の骨が山になっていたのです。「さてはみちのくにありと聞く、鬼の化身か」と急いで逃げました。一方、帰って来た老婆は、旅の僧がいないので、「やっぱり、さとられたか」と、本性を現し形相ものすごく、僧を追いかけました。追いつかれそうになった阿闍梨はは呪文を唱え、如意輪観世音菩薩を念ずると、尊像が現れ、光明を放ち、破魔の弓に金剛の矢をつがえて、鬼女を射殺したという、悲しく恐いお話です。