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2021-02-23 10:13:00

三面 伝説1 みおもてでんせつ

新潟県村上市三面

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昔、勝成裕(かつなりひろし)という、米沢藩に仕えていた医者がおりました。

ある時、藩主上杉ようざん公から千古の秘境といわれる三面の谷に、薬草を探せと命ぜられました。

彼は十四人の供をしたがえて、旅姿もかいがいしく、米沢の城下を出発したのは、夏も半ばの暑い日でした。

一行十五人のうちの半分は、食糧をかつぐ人夫や、道を切り開く木こりでしたが、その中に一人変ったものがおりました。

それは立花直芳という、江戸の絵描です。

直芳は狩野派の画家で、たまたま米沢に来ていたところ、人跡未踏の三面の秘境を探る話を聞いて、特に願い出て一行の中に加えてもらいました。

一行は道なき道を切り開いて道を造り、ある時は崖をよじ登リ、又ある時は谷を渡るなどして、ようやく三面の里近くにたどり着きました。

その時直芳は崖下の谷川で一人のうら若い女の、水あびをしている姿を見出しました。

自分の背丈程もある黒髪を背に流し、白い肌もあらわにして、髪をすぐその立姿は、この世のひととも思われず、直芳は恍惚として見とれていましたが、はっと気がつき急いで矢立を取り出し、その姿を書き写そうとしましたが、その乙女は、それをす早く感じとり、にげ去ってしまいました。

やがて一行は村人達にも心よく迎えられて、そこかしこの山や谷に薬早を探し始めましたが、直芳はあの乙女のことが忘れられず、薬草探しにも身が入りません。

ある日直芳はふらりと家を出て、村はずれまで来ますと、こんもりとした森の中の、小さなお宮の前で、ひざまずいて何事かを一心に祈っている女をみて、思わず目をみはりました。

その女こそ先日谷川で水あびをしていた乙女ではありませんか。

直芳は前後を忘れてかけより、今までの自分の心を打ちあけました。

乙女は名を小露といい、問われるままに重い口を開いてこの村の因習を語りました。

この村の若い女は、あの谷川で髪を洗うならわしでした。

しかしその姿を他国の人に見られた者は一生、男とは添われぬという因縁がありました。

実は小露には、お互いにいいかわした人があったのですが、他郷の者に見られてはならない姿を、直芳に見られてしまい、そのために、その許婚者から捨てられてしまったのでした。

小露はなげき悲しみましたが、やがてその怒りは直芳に向けられ、あの男のために自分の幸せは破られてしまった、それなら神に祈って祈り殺してやろう、と、このお宮で祈っていたということでした。

直芳は話をき終り、それは根拠のない迷信であることを、熱心に説いてきかせ、こんな迷信で女の一生を捨てさせては可哀そうだと思い、この小露を自分の妻に迎えて、江戸へ連れ帰ったということです。

しかし、村人達の迷信を破ることは出来なかったようです。

村人は小露が許婚者に捨てられたのも、叉他国へ落ちていったのも、見せてはならぬ姿を見られた、女の宿命として少しも、うたがわなかったそうです。