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2021-02-23 10:18:00

三面 伝説2 一人生き残った平家 みおもてでんせつ

新潟県村上市三面

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ある日、三面川の下流に金梨子(きんなし)地に、揚羽の蝶の紋のついた、きれいな箱が流れてきました。

それは今までに誰も見た事もない、大変珍らしいもので、普通の人の持物とは思えない香箱でした。

それを伝えきいた村上の殿様は、きっと三面川の上流には高貴な人が住んでいるに違いないと、さっそく数人の若者に、上流を調べさせることにしました。

若者達がたどった上流は、きこりの通う道さえもないけわしさで、切り立ったような断崖や、三面川の激流は瀬となり淵となって人間業では進みようのない難所ばかりでした。

こんな山深い所に人が住んでいるとは思われず、ましてや高貴な人が住むなぞとはどうしても考えられません。

そんなことを話合っている若者達のかたわらを、見なれない山男のような人が一人、弓矢を手にして通りか上りました。

おどろいた若者は、勇気を出して呼びとめ

”こんな山奥に人の住んでいる所があるか”

とたずねますと、その人は無言でうなずいたま上、野獣のような早さで川上の方へ、かけ去ってしまいました。

若者たちはその後を追って、川上まで行きますと、緑にかこまれた谷間に、一軒の山小屋のような家を見出しました。

この家こそ、あの高貴な香箱の持主の、世をしのぶ住家なのでした。

若者たちは案内をしてくれた男から、くわしい物語りをきくことが出来ました。

それはおよそ八一○年前の寿永一二年、壇の浦の戦いで敗れた平家の一門のうち、ただ一人生き残った池大納言頼盛卿でした。

源頼朝の乳母、池の禅尼に育てられた人で頼朝とは乳兄弟の間柄であったので、ひそかに助けられ、奥方の水草の前、長男の四郎丸、次男の愛宕丸や、代々仕えて来た家来七人をつれて、遠く奥羽の国に落ちのびようといたしました。

やっと岩船の里にたどりついたものの、野武士達に苦しめられ旅を続けることもならず、のがれのがれて、この三面川の上流の山深い所に、一時身を偲ばせたのでした。

住めば都の習いで、一時の仮住居の地も、いつか安住の地と変り、頼盛卿はついに三面の地で、この世を去ったのでした。